カトマンズ中が盛大に盛り上がるインドラ・ジャトラ

西暦:2018年9月24日(月)
ビクラム歴:2075年・Ashwin (アッシュウィン月/第6月)8日

インドラ ジャトラは、カトマンズ盆地に住むネワ―ル族のお祭りです。「インドラ」は、ヒンドゥー教の神の名称で、サンスクリット語で「強力な神々の中の帝王」を意味します。「ジャトラ」は、「行列」を意味します。

このお祭りの大きな見どころは、3つあります。一つは雨をもたらす豊穣の神「インドラ」を祀るために巨大な御柱が立てられること生き神クマリが山車に乗ってカトマンズの街を巡行すること。そして毎夜繰りひろげられる仮面舞踏です。

一つ目の見どころ御柱は、バサンタプールの敷石の一部をはがし御柱を入れ大勢の人々が3本のロープを引いて立てられます。この御柱は、バクラプルの奥にある村の松の大木を伐り出し一週間かけてカトマンズ近くまで曳きだされ、そこからバサンタプールまではネワール族の人々によって運ばれます。

はるか昔むかし天に住むインドラは、母親の大好きなパリジャートの花が天では見つからず下界に咲いていたパリジャートの花を取りに降りて来たところを泥棒と思われて捕まってしまいました。この言い伝えによるのでしょう。御柱の根元にはインドラが小さな檻に入れられています。
インドラは、この時の汚名を晴らすために下界の人々に五穀豊穣を約束しました。これがインドラ ジャトラの祭の起源になったと言われています。

この御柱は、その様子から信州の諏訪御柱祭の起源とは同じではないかとする説もあります。そして諏訪市博物館では、「松の木を曳いてきて里に立てる祭り。見立て、伐採、曳行、川越し、柱立てとまさに御柱祭と同じ」と紹介されインドラ ジャトラの映像を見ることができます。
諏訪市博物館:0266-52-7080/https://suwacitymuseum.jp/

もう一つの見どころは、ネパールの守護神タレジュ女神の生まれ変わりとされる生き神クマリが山車に乗ってカトマンズの街(ネワール族の多く住む地域)を巡行するクマリ ジャトラです。クマリの巡行は、町の邪気を払い、繁栄をもたらすとされ、多くの人々がクマリを一目見ようと、またクマリからの祝福を受けようと巡行の山車を取り巻き、列をなして続きます。そんなことから「ジャトラ」と呼ばれるのかもしれません。

一説には人間の数より神々の数が多いとされるネパールでもクマリは、独特の生き神様です。このクマリは、初潮前のネワール仏教徒のサキャ族出身の少女に限られます。3~5歳前後で子牛のようなまつげ獅子のような胸柔らかくしなやかな手足など32の身体の特徴と、厳しい条件に合格した少女だけが選ばれその後、クマリの館(ダルバール広場前)で初潮を迎えるまでこの館で暮らします。クマリが館の外に出る事はありません。館の中で人々の願望成就の祈願や、占いなど日々の儀礼をおこないます。
普段はクマリの館に住んでいて、このお祭りを含めて年に数回以外は、人々の前に出てくることはほぼありません。また、クマリには、家族や親しい人以外と話してはいけない、喜怒哀楽の表情を表に出してはいけない、自分の足で歩いてはいけない、などの決まりがあり、このお祭りの際も大人に抱えられて山車に移ります。

クマリ ジャトラは、8日間続くお祭りの3日目、4日目。そして8日目の3日間です。このお祭りを含め年に数回しかクマリの館を出ることができないクマリ自身にとっても楽しい3日間なのではないでしょうか。(近年は、封建的な慣習、人権侵害などの批判もありクマリの生活も変わりつつあるようです。)

そして連日繰り返される仮面舞踏も一見の価値があります。
夕方、カトマンズや近在の村々から多くの踊り手たちがハヌマンドカに集まり神々の仮面をかぶりさまざまな衣装にみを包んで裸足で踊ります。ガネーシャ神を表現した白い象の踊り、チベットの仏教説話をベースにした踊り、バイラブ神とその2人の弟子の踊りなどなどです。

また、クマリの館近くのステージでは10の形に変化する神様を演じる大人や子供たちの姿を見ることができます。踊りには、当然のように鐘、太鼓、ラッパなどの演奏が加わって盛り上がり、初日から最終日まで繰りひろげられます。

3つの見どころ以外にもシヴァ神の化身「バイラブ神=スウェタ バイラブ神」がこのインドラ ジャトラのお祭りの時のみご開帳されます。普段は、木の扉では覆われていて見ることはできません。すぐそばにあるカーラ バイラブ神と同時に見ることが出来る一年に一度の貴重な光景です。

ご開帳されたスウェエタ・バイラブ神の前では生贄の水牛の首が切り落とされ地元に人たちによってきれいに磨かれそして華やかに飾り立てられます。
このスウェタ バイラブ神の前では、家族が死者に対面するための儀礼が行われます。夜にはライトアップされその口から流れ出るチャンと言われるお米から作られた濁り酒が流れこれを飲むと身体が丈夫になるとされています。

最終日、生き神クマリの巡行が終わるとほぼ同時に初日に建てられた御柱が倒されバグマティ川に運ばれて8日間のお祭りは終わります。
この後、ダサイン(10月16日/アシュウィン月:第6月30日~)、ティハール(11月5日/カーティク:第7月19日~)とネパールの秋のお祭りのシーズンが始まります。

来年(2019年/ビクラム暦2076年)のインドラ ジャトラは、9月12日(木)から始まるようです。(確定ではありません)。ネパールのトレッキング・シーズンの幕開け直後です。是非、ご自身の目でご覧になってみては・・・

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